私は2人の司法書士から司法書士事務所を承継しています。
1か所目は清水事務所です。
清水事務所はもともと私の父が長年営んでいた司法書士事務所です。私の父は60歳でこの世を去りました。病気が発覚して半年後のことでした。借金・多重債務問題に熱心に取り組み、死の直前まで第一線で活躍しておりました。本人も家族も予期せぬ突然の死。幸いにも私は司法書士として父の事務所に勤務していましたので、突然の死に戸惑いながらも周りの方々の助けを借りて、どうにか事業承継を行うことができました。
2か所目は静岡事務所です。
父の仲の良かった司法書士の先生が、体調を崩され、57歳の若さでこの世を去りました。亡くなる1年ほど前、先生が私の事務所を訪れ、事業譲渡を打診されました。司法書士の仕事は、「人」につく仕事です。この先生「だから」依頼したい。この人「だから」信頼できる。弁護士事務所や税理士事務所と違って司法書士事務所は顧問契約の件数が一般的には少ないことでわかるように、契約で取引先とつながっている例はあまり多くありません。核となる人がいなくなってしまうと、一気に顧客を失いかねません。司法書士事務所の事業承継は後任者として周囲に認めてもらえるよう、本来は時間をかけて徐々に行うのが好ましいのです。先生はご自身が若かったこともありどこかで心の葛藤があったのだろうと思います。引き継ぎはなかなか進みませんでした。「春から一緒に事務所を出して徐々に承継していこう」と話しあっていた矢先、急に病状が悪化し、先生が働けない状況になり、ほとんど引継ができないまま事務所を承継することになりました。